なぜNexusが必要なのか

なぜNexusなのか

ゲーム開発は難しい

何年もの開発期間。毎回、メカニクスをゼロから考え、システムとして組み上げる。飢餓を入れたければ飢餓システムを書く。飢餓が移住を引き起こすなら、移住システムを追加して両者をつなぐ。移住が戦争を引き起こすなら - もうひとつの接続、もうひとつのコード、さらに数ヶ月の作業。

新しいメカニクスを追加するたびに複雑さが掛け算で増える。アイデアが難しいからではなく、開発がそういう構造だからだ。システム間のつながりひとつひとつが、個別のコード、個別のデバッグ、個別の保守を意味する。世界が深くなるほど、つながりが増え、全体を維持するのが困難になる。

業界で最も深いゲームは、数十年かけて開発されている。世界の深さの代償は、年月だ。

メカニクスのコピー

年を追うごとにリリースされるゲームの数は増えている。生成AIの登場で、この流れはさらに加速する。プレイヤーも増えてはいるが、ゲームほどのペースではない。一人ひとりのプレイヤーを巡る競争が激しくなっている。

一方で、同じジャンルのゲームの大半は内部構造が似通っている。RPGは他のRPGに似ているし、ストラテジーは他のストラテジーに似ている。違いはディテール、グラフィック、世界観にある。しかし、どのスタジオも毎回ゼロから基盤を組み立てている - 戦闘システム、経済、AI、イベント。同じメカニクスが何千ものスタジオで並行して再発明されている。

サンドボックスゲームでさえ、個別の硬直したシステムの寄せ集めに過ぎない。多様性はシステムの数で実現されており、アーキテクチャそのものの発想が変わったわけではない。

従来のアプローチとその限界

業界の標準的なアプローチは、現在のトレンドを見て、成功したプロジェクトのアイデアを組み合わせながら独自の解決策を提案することだ。

開発には大きく3つのアプローチがある:

  • 実験的な「夢のゲーム」 - 最大限のオリジナリティを追求。リスクは高いが、異色のヒットを生む可能性がある。
  • クローン - 最小限の変更でゲームを量産。最もリスクの低い道。
  • 中間 - 実績あるアイデアと新しい要素の組み合わせ。大多数の開発者がこの方法をとっている。

どの道を選んでも、プロセスは進化的だ。今有望に見えるアイデアを選び、実現を試みる。結果は事前にわからない。成功作の後でも、次の作品は事実上ゼロからのスタートだ。資金も実績ある手法も、結果を保証しない。

しかし最大の問題はそこではない。従来のアプローチは深さ方向にスケールしない。複雑さはシステムの数に比例するのではなく、システム間のつながりのせいでそれよりはるかに速く膨れ上がる。だから深い世界を従来の方法で作ると、十年単位の時間がかかる。

別のアプローチ

私はエンジニアリング手法TRIZの「理想的最終結果」という概念を使った。要点は、成功するプロジェクトは試行錯誤の結果ではなく、課題を正確に定義した結果だということ。

最初のステップは、目標を設定すること。何を求めているのか? 理想的な最終結果とは何か? 目標が明確であるほど、あらゆるアイデアやトレンドの評価が容易になる。

理想のゲームという指針

理想のゲームは一般的に、現実と区別がつかないシミュレーション、プレイヤーが何でもできる世界として語られる。この定義からいくつかの要件が導かれる:

  • プレイヤーは参加者にも観察者にもなれる
  • あらかじめ決められたジャンルはない - ゲームがプレイヤーの要求に適応する
  • シングルプレイとマルチプレイの区別がない
  • 世界はスクリプトなしで自然に反応する。ありふれた買い物が冒険に変わることもある。

今、このようなゲームを作ることは不可能だ。しかし、方向性を示してくれる。

どんな新しいアイデアやメカニクスも、この方向に照らし合わせて評価できる。同じ方向を向いているのか、逸れているのか、逆行しているのか。理想のゲームに近いアイデアほど、大きな可能性を秘めている。

リプレイ性やMODを備えたサンドボックスの人気が高まっている - 業界はこの方向に動いている。

高まるプレイヤーの期待

プレイヤーはより多くの自由、リプレイ性、可能性を求めている - そしてその要求は理想のゲームと同じ方向を向いている。かつて相容れないと思われていたものを組み合わせ、実験したいと考えている。確立されたジャンルの境界がますます曖昧になっている。

しかし、自由と深さが増すほど開発は難しくなる。最も有望な方向が、最も困難な方向でもある。

解決策: フラットな複雑さ

私はメカニクスの数が増えても複雑さが増大しないシステムを作ることにした。建築ブロックのようなものだ - 石、木、レンガ。100万個のブロックで城を建てても、システム自体は複雑にならない。ブロックは同じ。ルールも同じ。増えるのは量だけで、複雑さではない。Nexusは同じ原理をすべてのゲームメカニクスに適用する。

新しいメカニクスの追加がシステムを複雑にしてはならない。新しいコードでも新しいサブシステムでもなく、同じフラットな構造に追加される新しい事実だ。

基盤となるのはトリプレット(事実) - ナレッジベースやセマンティックネットワークで使われる形式で、主語、述語、目的語からなる。「干ばつは飢餓を引き起こす」と「戦争は移住を引き起こす」は同じ構造だ。自然現象を記述しても社会的プロセスを記述しても、形式は変わらない。

事実の形式言語は、複雑さを増やさずにスケールする。世界についての10の事実でも1万の事実でも - 同じ構造、同じルール、同じエンジン。

Nexusはコード(コンピュータへの命令)ではなく、事実(世界についての記述)の上に構築されている。事実は追加も削除も組み合わせも自由で、世界は自動的に再構成される。

なぜこの方法なのか

スクリプトの代わりに因果の連鎖。通常のゲームでは「干ばつ → 飢餓」は手書きのスクリプトだ。Nexusではこれが事実になる - 「干ばつは草を減らす」「草がない → 草食動物の飢餓」「飢餓 → 移住」「移住 → 衝突」。個々の事実はシンプルだ。

ジャンルはモジュール。メカニクスが事実なら、ジャンルは事実の集合だ。戦略的管理の事実を追加すればストラテジーになる。カードバトルの事実を追加すればカードゲームになる。両方を追加すれば、カードバトル付きのストラテジーになる。

既存のプラットフォームはスクリプトとエディタで世界を構築する。Nexusは事実 - 世界がどう機能するかについての記述 - で世界を構築する。

Clarus Victoriaの歩み

Clarus Victoriaは13年間で7本のゲームをリリースしてきた - 歴史ストラテジーのStone AgeやEgypt: Old Kingdomから、ファンタジーRPGのNext Runまで。どの作品も限られたセッティングと限定的なメカニクスを扱っていた。その間ずっと、プレイヤーからは「他の時代も作ってほしい - ローマ、中国、メソポタミア」という声が寄せられていた。実際、作りたいと思っていた。

資料やメカニクスの少ない時代を扱っているうちは順調だった。しかし、情報源もメカニクスも豊富な時代に差し掛かると、従来の手法では対応しきれなくなった。従来のアプローチでは数年ではなく数十年かかる。だから私はNexusを作り始めた。

ミハイル・ヴァシリエフ